理事長の承認が必要なリフォーム工事とは?

マンション管理
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どうも弁護士のスヌスムムリクです。

マンションを購入するまで(厳密には管理規約を読むまで)は、「専有部は”自分の城”なんだから、自由に手を加えられるだろ!」なんて考えていました。

でも、実はそんなことはないんですよね・・・

管理規約では、区分所有者が、専有部について、修繕、模様替え又は建物に定着する物件の取付け若しくは取替えを行う場合(これらを「修繕等」と定義しております。)には、理事長から書面による承認を得る手続を要求しています。

つまり、区分所有者側から見れば、「修繕等」を行う場合には、理事長から書面による承認を得る必要があり、理事長側から見れば、区分所有者からの申請に対して「承認」するか否かを判断する必要がある、ということになります。

そうなると、具体的に、どのような場合が「修繕等」に該当するのか、どのような場合に「承認」すべきなのか、という点が気になってきますね。

例えば、部屋をリフォームする場合には、「模様替え」にあたり、大小関係なく、理事長の承認を得る必要があるのでは?と疑問に思う方もいらっしゃるかもしれません。

そこで、以下では、それぞれの立場から気になる点を解説していきます。

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区分所有者の立場から

根拠条文について

まずは、少し長いですが、標準管理規約の該当条文を見てみましょう。

(専有部分の修繕等)

第17条 区分所有者は、その専有部分について、修繕、模様替え又は建物に定着する物件の取付け若しくは取替え(以下「修繕等」という。)であって共用部分又は他の専有部分に影響を与えるおそれのあるものを行おうとするときは、あらかじめ、理事長(第35条に定める理事長をいう。以下同じ。)にその旨を申請し、書面による承認を受けなければならない。

2 前項の場合において、区分所有者は、設計図、仕様書及び工程表を添付した申請書を理事長に提出しなければならない。

3 理事長は、第1項の規定による申請について、理事会(第51条に定める理事会をいう。以下同じ。)の決議により、その承認又は不承認を決定しなければならない。

4 第1項の承認があったときは、区分所有者は、承認の範囲内において、専有部分の修繕等に係る共用部分の工事を行うことができる。

5 理事長又はその指定を受けた者は、本条の施行に必要な範囲内において、修繕等の箇所に立ち入り、必要な調査を行うことができる。この場合において、区分所有者は、正当な理由がなければこれを拒否してはならない。

6 第1項の承認を受けた修繕等の工事後に、当該工事により共用部分又は他の専有部分に影響が生じた場合は、当該工事を発注した区分所有者の責任と負担により必要な措置をとらなければならない。

7 区分所有者は、第1項の承認を要しない修繕等のうち、工事業者の立入り、工事の資機材の搬入、工事の騒音、振動、臭気等工事の実施中における共用部分又は他の専有部分への影響について管理組合が事前に把握する必要があるものを行おうとするときは、あらかじめ、理事長にその旨を届け出なければならない。

https://www.mlit.go.jp/common/001202416.pdf

理事長への「申請」が必要な場合とは?

規約17条1項を見ると、区分所有者がリフォームなどを行う場合に、理事長への「申請」が必要になるのは、次の2つの条件を満たすような場面になります。

①専有部分のリフォームが「修繕等」に該当すること

②当該リフォームが共用部分又は他の専有部分に影響を与えるおそれのあること

それぞれ補足していきます。

①専有部分のリフォームが「修繕等」に該当すること

標準管理規約のコメントでは、「修繕等」の具体例として、「床のフローリング、ユニットバスの設置、主要構造部に直接取り付けるエアコンの設置、配管(配線)の枝管(枝線)の取付け・取替え、間取りの変更等」を挙げています。

そもそも「修繕等」の定義自体が広いので、”「修繕等」に該当しないので申請不要”という場面は殆どないんでしょうね。

②当該リフォームが共用部分又は他の専有部分に影響を与えるおそれのあること

どちらかというと、こちらの要件で、申請対象か否かを区別しているようです。

「影響を与えるおそれ」という文言が抽象的なので、マンションごとに評価は変わりますが、標準管理規約別添2では、次のようなものは「他の区分所有者への直接・間接の影響がない工事」として、申請不要としています。

①専有部分の電球の取替え

②水道のパッキンの取替え

③シャワーヘッドの取替え

④温水洗浄便座の取替え

そのため、これらに類似しているものについては、ひとまず「影響がない工事」と評価して良いでしょう。

ちなみに、当然ですが、区分所有法6条1項では、「区分所有者は、建物の保存に有害な行為その他建物の管理又は使用に関し区分所有者の共同の利益に反する行為をしてはならない。」と規定されておりますので、専有部分の増築又は建物の主要構造部に影響を与えるような工事は、申請の有無に関係なくできません(標準管理規約コメント)。

なお、標準管理規約別添2では、部位ごとに申請が必要な工事か否かの詳細な区分けをされていますので、気になる方はご参照ください。

理事長の承認を得た場合にできることは?

理事長の承認を得た場合には、承認の範囲内で、専有部分の修繕等とこれに係る共用部分の工事を行うことができます(標準管理規約17条4項)。

後者としては、例えば、配管(配線)の枝管(枝線)の取付け、取替え工事に当たって、共用部分内に係る工事をするような場合を想定しているようです(標準管理規約コメント)。

なお、共用部分の工事が共用部の変更に当たる場合には、別途、総会決議が必要になりますので注意が必要です。

修繕等を行う場合の注意点は?

まず、理事長の承認を得て、修繕等を行った後に、共用部や他の区分所有者の専有部に影響が出た場合には、その影響を自らの責任と負担で是正する必要があります(標準管理規約17条6項)。

また、本来は理事長の承認を得て実施すべき修繕等について、承認を得ずに実施した場合には、理事長から、その是正等のため必要な勧告又は指示、警告を受けたり、その差止め、排除又は原状回復のための必要な措置等を求められたりする可能性があります(標準管理規約コメント)。

なお、理事長の承認を得る必要がないものであっても、工事業者の立入り、工事の資機材の搬入、工事の騒音、振動、臭気等工事の実施中における共用部分又は他の専有部分への影響が懸念される場合には、予防的に、理事会と情報共有しておくのが無難でしょう(標準管理規約17条7項)。

理事長の立場から

区分所有者から専有部リフォームの申請があった場合、理事会で、承認・不承認の判断をしなければなりません(標準管理規約17条3項)。

まず、手続的に、申請書に①設計図、②仕様書及び③工程表の添付漏れがないか確認が必要です(標準管理規約17条2項)。

その上で、資料を確認して、工事内容に「共用部分又は他の専有部分に影響を与えるおそれ」がないかを検討することになります。

もっとも、理事会・理事長が建築について専門的な知見を持っているとは限りません。

そのため、標準管理規約コメントでは、次のような指摘があります。

⑤承認を行うに当たっては、専門的な判断が必要となる場合も考えられることから、専門的知識を有する者(建築士、建築設備の専門家等)の意見を聴く等により専門家の協力を得ることを考慮する。特に、フローリング工事の場合には、構造、工事の仕様、材料等により影響が異なるので、専門家への確認が必要である。

⑥承認の判断に際して、調査等により特別な費用がかかる場合には、申請者に負担させることが適当である。

⑦工事の躯体に与える影響、防火、防音等の影響、耐力計算上の問題、他の住戸への影響等を考慮して、承認するかどうか判断する。

https://www.mlit.go.jp/common/000161665.pdf

フローリング工事に関しては、「専門家への確認が必要」とまで断言されているのが興味深いですね。

その他、標準管理規約別添2では、工事部位に応じて理事会の「承認の条件」が挙げられていますので、興味のある方はご参照ください。

なお、標準管理規約コメントでは、「本条の規定のほか、具体的な手続き、区分所有者の遵守すべき事項等詳細については、使用細則に別途定めるものとする。」とされております。正直、標準管理規約17条のみでは、どういう段取りで申請したら良いのか、承認・不承認を判断して良いのか良く分かりません。やはり、無用な混乱を避ける意味でも専有部工事に関する使用細則は定めた方が良いのでしょうね。

ではでは。

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