どうもスヌスムムリクです。
マンションに住んでいると、共用部分・専有部分に加え、専用使用部分という言葉を聞くことがありますよね。
区分所有法2条
八 専用使用権 敷地及び共用部分等の一部について、特定の区分所有者が排他的に使用できる権利をいう。
九 専用使用部分 専用使用権の対象となっている敷地及び共用部分等の部分をいう。
https://www.mlit.go.jp/common/001202416.pdf
例えば、バルコニーや玄関扉、窓枠などが専用使用部分に該当します。
それでは、この専用使用部分を管理するのは、管理組合なのでしょうか。それとも専用使用権を有している区分所有者なのでしょうか。
以下、標準管理規約を参考に、整理してみたいと思います。なお、専用使用部分の範囲は、マンションごとに異なりますので、気になる方は、自分がお住いのマンションの標準管理規約(特に別表)をご覧ください。
専用使用部分の具体例
専用使用部分に関する規定は、標準管理規約だと14条にあります。
標準管理規約14条
1 区分所有者は、別表第4に掲げるバルコニー、玄関扉、窓枠、窓ガラス、一階に面する庭及び屋上テラス(以下この条、第21条第1項及び別表第4において「バルコニー等」という。)について、同表に掲げるとおり、専用使用権を有することを承認する。
https://www.mlit.go.jp/common/001202416.pdf
標準管理規約の別表4に具体的な専用使用部分が挙がっているようなので、以下、引用します。
こうした専用使用部分は、本来的には共用部分であるため、特定の利用者が独占的に利用できる反面、以下のとおり、使用細則によって特有の制約を受けることになりますので、注意が必要です。
標準管理規約14条関係
② 専用使用権は、その対象が敷地又は共用部分等の一部であることからそれぞれの通常の用法に従って使用すべきこと、管理のために必要がある範囲内において、他の者の立ち入りを受けることがある等の制限を伴うものである。また、工作物設置の禁止、外観変更の禁止等は使用細則で物件ごとに言及するものとする。
https://www.mlit.go.jp/common/000161665.pdf
なお、専用使用部分の設定、変更、廃止を行う場合には、規約変更を行うことになりますが、その際には、区分所有者に「特別の影響を及ぼす」といえるかどうかを別途検討しなくてはなりません(この論点に関しては、こちらの記事をご参照ください。)。
区分所有法31条
1 規約の設定、変更又は廃止は、区分所有者及び議決権の各四分の三以上の多数による集会の決議によつてする。この場合において、規約の設定、変更又は廃止が一部の区分所有者の権利に特別の影響を及ぼすべきときは、その承諾を得なければならない
https://elaws.e-gov.go.jp/search/elawsSearch/elaws_search/lsg0500/viewContents?lawId=337AC0000000069_20150801_000000000000000
専用使用部分の管理責任
いよいよ本題ですが、専用使用部分の管理は、区分所有者がしないといけないのでしょうか。
結論からいうと、専用使用部分の管理は、管理組合が行うのが原則です。
但し、例外として、「通常の使用に伴う」保存行為については、区分所有者がしなければなりません。
なお、補足ですが、区分所有者が保存行為を行う場合には、原則として理事長の承認を受ける必要があります。例外的に承認が不要な場面は、①通常の使用に伴う保存行為と②緊急を要する保存行為になります。
標準管理規約21条
1 敷地及び共用部分等の管理については、管理組合がその責任と負担においてこれを行うものとする。ただし、バルコニー等の保存行為(区分所有法第18条第1項ただし書の「保存行為」をいう。以下同じ。)のうち、通常の使用に伴うものについては、専用使用権を有する者がその責任と負担においてこれを行わなければならない。
3 区分所有者は、第1項ただし書の場合又はあらかじめ理事長に申請して書面による承認を受けた場合を除き、敷地及び共用部分等の保存行為を行うことができない。ただし、専有部分の使用に支障が生じている場合に、当該専有部分を所有する区分所有者が行う保存行為の実施が、緊急を要するものであるときは、この限りでない。
https://www.mlit.go.jp/common/001202416.pdf
この「通常の使用に伴うもの」か否かに関しては、標準管理規約コメントが参考になります。
標準管理規約コメント21条関係
① 駐車場の管理は、管理組合がその責任と負担で行う。
② バルコニー等の管理のうち、管理組合がその責任と負担において行わなければならないのは、計画修繕等である。
③ 本条ただし書の「通常の使用に伴う」管理とは、バルコニーの清掃や窓ガラスが割れた時の入れ替え等である。
④ 第2項の対象となる設備としては、配管、配線等がある。
⑤ 配管の清掃等に要する費用については、第27条第三号の「共用設備の保守維持費」として管理費を充当することが可能であるが、配管の取替え等に要する費用のうち専有部分に係るものについては、各区分所有者が実費に応じて負担すべきものである。
https://www.mlit.go.jp/common/000161665.pdf
なるほど・・・謂わんとすることは何となく分かりますが、②・③ともに「等」となるので、守備範囲が良く分からないですね。
マンション全体で一斉対応するような場合は管理組合負担、個別の住戸に限った個別対応は専用使用権を有している者の負担という整理になるのでしょうか。
まとめ
以上のとおり、専用使用部分の管理に関しては、「通常の使用に伴うもの」か否かで結論が大きく変わります。
例えば、いわゆる窓ガラスの「熱割れ」という現象が発生した場合、その補修費用は、管理組合負担でしょうか。それとも各区分所有者負担でしょうか。標準管理規約のコメントの基準からは、どちら負担なのか良く分かりません。
管理組合としては、「通常の使用に伴うもの」か否かの区別が難しい以上、使用細則に条文を設け、事前に各事象が発生した場合の費用負担者を明確にしておくのが望ましいと考えます。
こうしておくことで、事象が発生した場合に速やかに対応できますし、同一事象について各区分所有者を平等に扱うことができるはずです。
ではでは。
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