大津園児死亡事故 直進車と右折車の法的責任は?

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 どうもスヌスムムリクです。

 先日、大津市で乗用車が散歩中の保育園児13名、保育士3名の列に突っ込み、園児2人死亡、1人重体、13人重軽傷という悲惨な交通事故が起きました(以下「本件」といいます。)。

 私も1歳6ヵ月ほどの子どもを持つ親として他人事とは思えません。

 本件は、52歳女性が運転する乗用車(以下「右折車」といいます。)が、前方から直進してくる軽乗用車に注意を払わずに右折したため、62歳女性が運転する軽乗用車(以下「直進車」といいます。)と衝突し、右折車を避けようとハンドルを左にきった直進車が保育園児、保育士の列に突っ込んでしまった事案です。

 本件については、例えば、年配者の自動車運転の問題、実名報道の問題、逮捕・釈放の問題、メディアの報道の仕方の問題などについて、ネット上で様々な意見が飛び交い、議論されていますね。

 では、そもそも、本件において、右折車女性及び直進車女性には、どのような責任が発生する可能性があるのでしょうか?

 以下、なるべくわかりやすく説明したいと思います。なお、現場の具体的な状況を詳細に確認できないので、一般論に近くなりますがご容赦ください。



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総論

 まず、法律上の責任は、①民事責任②刑事責任③行政責任の3つに分けることができます。

 本件では、以下の法律が問題になり得ます。

 ①民事責任:民法(不法行為)

 ②刑事責任:自動車運転処罰法

 ③行政責任:道路交通法

 それぞれ見ていきましょう。

各論

民事責任について

 まず、交差点へ進入した直進車と右折車との衝突事故の場合、その交差点が信号機により交通整理が行われているかどうかによって、過失割合の考え方が異なります。

 本件は、信号機により交通整理が行われている交差点での事故でしょう。

 こうした場合、直進車が優先されますので(道交法37条)、直進車の進行を妨害した右折車女性の過失が重くなりますが、直進車女性にも交差点での注意義務がありますので(道交法36条4項)、全く過失がないということにはなりません。

道交法第37条

車両等は、交差点で右折する場合において、当該交差点において直進し、又は左折しようとする車両等があるときは、当該車両等の進行妨害をしてはならない。


道交法第36条4項

車両等は、交差点に入ろうとし、及び交差点内を通行するときは、当該交差点の状況に応じ、交差道路を通行する車両等、反対方向から進行してきて右折する車両等及び当該交差点又はその直近で道路を横断する歩行者に特に注意し、かつ、できる限り安全な速度と方法で進行しなければならない。

 具体的な過失割合は、直進車女性80:右折車女性20が基準となり、事故の状況等によって変動します。

 本件では、悲惨なことに幼い子どもの命も失われていますので、被害者の逸失利益(生存していれば将来得ていたはずの収入に対する補償)や慰謝料(被害者本人分、遺族分)、葬儀費等が損害になり、これらを直進車女性、右折車女性が過失割合に応じて負担することになります。

刑事責任について

 本件では、右折車女性及び直進車女性の対応が、自動車の運転により人を死傷させる行為等の処罰に関する法律5条に該当するかどうかが問題になります。


自動車の運転により人を死傷させる行為等の処罰に関する法律5条 

自動車の運転上必要な注意を怠り、よって人を死傷させた者は、7年以下の懲役若しくは禁錮又は100万円以下の罰金に処する。ただし、その傷害が軽いときは、情状により、その刑を免除することができる。

 刑事の場合、民事以上に過失の有無が厳密に評価されることになります。

 ポイントは、本件において、右折車女性及び直進車女性が「運転上必要な注意」を怠った(過失)といえるかどうかです。

 具体的には、①予見義務違反、②結果回避義務違反があったかどうかで判断されます。これは、最終的に裁判官が証拠評価の上で判断するものですので、以下で述べることは、あくまで予想の域を出ません。

 まず、右折車女性は、交差点において、直進車に注意を払わずに右折しています。

 通常、交差点で右折する際に反対車線の自動車の状況を把握せずに強引に右折をしてしまうと、反対車線を通行していた車両と衝突するなどの事故に繋がり、人の死傷結果が発生する可能性があることは容易に予見できますよね。それにもかかわらず、人の死傷結果が発生する可能性があることを予見せず、右折を止めるなどの回避行動をとっていなかったとすると、右折車女性は、過失運転致死傷罪に問われることになります。

 つぎに、直進車女性は、右折車を避けようとハンドルを左にきっています。

 直進車女性が、“右折車を避ける行為”をする際に、咄嗟にその行為によって人が死んでしまう可能性があることを予見できるのか微妙ですし、本件での直進車女性の行動以外に、何か別の手段があったのかも疑問です。そうすると、直進車女性を過失運転致死傷罪に問うのは難しいように思います。

行政責任について

 本件において、右折車女性及び直進車女性は、道交法違反の責任を負うことになります。

まとめ

 いかがでしょうか。

 本件の事故態様をみると、直進車女性の民事責任、刑事責任を問うのは酷な気もします。こうした中で、一部のメディアでは、直進車女性の実名を報道しているようですが、その判断は妥当なのか疑問です。

 今後の動向にも注目していきたいと思います。

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