どうもスヌスムムリクです。
社内弁護士として勤務するようになってからというもの、法律事務所で働いていた時より弁護士同士での書面のやり取りが減り、当事者(顧客)との書面のやり取りが格段に増えました。
当然ながら、当事者(顧客)は、書面作成に不慣れな方が多いので、意味不明な請求書面やこちらの照会事項に対する回答になってない書面が散見されます。
そういう書面になってしまう原因は、日本語力云々というよりも、書面作成の作法を押さえられていないことにあります(まぁ、“書面作成の作法”と言ってみたものの、決して大袈裟なものではありません。)。
そこで、初歩的なことから書面作成のポイントと留意点を紹介したいと思います。
例えば、民間企業で請求書や督促状などを作成される法務担当の方や、レポート・論文等を作成される学生の方などの参考になればと思います。
書面作成のポイント
書面作成のポイントとして、以下の7つを挙げます。
1.書面の作成日付を入れる
たまに日付の記載漏れをしている書面を見かけることがあります。
書面の作成日付は、「その書面を作成した日」という意味合いだけでなく、法的には、遅くとも当該書面に記載されている事項について、「意思表示をした日」という重要な意味合いもありますので、記載漏れがないように注意する必要があります。
2.タイトルを付ける
タイトルを付ける意味は、大きく分けて3つあると思っています。
1つ目は、タイトルを付けることで、読み手(相手方)に、書面を読む前から、何の件の書面なのかという点について、予測可能性を与えるということです。これは、イメージしやすいかと思います。
2つ目は、事後的に書面を検索しやすくなるということです。同じ人と何度も書面でやり取りをするような場合、タイトルがないと、例えば、以前の書面を確認しようと思った際に、いちいち書面の内容を読み返すか、日付で書面を特定するか、しかなくなってしまいます。
3つ目は、本文の内容を読んでもらえる可能性が高まるということです。読み手(相手方)の中には、書面が届いてもどのような内容なのか、書面を最初から最後まで読まずに破棄してしまう人がいます。書き手(自分)が書面を作成した目的は、書面全体を読み手(相手方)に読んでもらうことにあるので、やはり、タイトルを付けることで書面の概要を伝えておきたいです。
3.ページ番号を入れる
同じ人と何度も書面でやり取りをするような場合に、事後的に書面を検索しやすくなるということです。
例えば、ページ番号が入っていると、「当方からの●年●月●日付「△△」●頁において、『』と指摘しています。」「貴殿からの●年●月●日付「××」●頁では、~と述べていますが、…」などというように、相互にやり取りがしやすくなりますし、実際に該当頁を確認する側も検索が容易になります。
4.ナンバリングや見出しを入れる
ナンバリングや見出しを入れることで、読み手(相手方)に、書面を読む前から、当該部分では何が述べられているのかという点について、予測可能性を与えることができます。
これは意外とできていない方が多いです。
1、2頁程度の書面であれば大したことはないですが、これが5頁、10頁となってくると話は別です。ナンバリングで章分けし、見出しを入れることで、読み手(相手方)に対し、“この部分では●●に関する記載ですよ”ということを示すことができます。
また、事後的に書面を読み返す時に検索しやすくもなります。
なお、法律文書の場合には、大項目から順に、第1→1→(1)→アというようにナンバリングを付けます。
5.定義を明確にする
これはどのような書面でも共通して非常に重要な事項です。
例えば、業者との業務委託契約書において、「本件業務」の内容が不明確になっているような場合には、委託者と受託者の間で、“この業務”が「本件業務」の範疇なのかどうかで疑義が生じる場合があります。
その他、示談書において、「本件事案」の内容が一義的でなかったような場合には、「『本件事案』として明記されていない●●について、示談は成立していない。」などといった残念な結果にもなりかねません。
書き手(自分)としては、読み手(相手方)との議論や説明の前提となる事項の定義を明確にしておく必要があります。
6.根拠・理由を明記する
これもどのような書面でも共通して非常に重要な事項です。
根拠・理由を明記することで、説得力のある書面ができます。
例えば、以下のとおりです。
「●●という治療は非常に高い治療効果が期待できます。」→「●●という治療は非常に高い治療効果が期待できます。●●の治療効果については、医学論文△△でも説明されています。」
「貴殿の対応は違法です。」→「貴殿の対応は、●●法△条×項が禁止する☆☆なので違法です。」
普段、私が仕事をしている中でも、「違法だ!損害賠償として●円支払え!」といった論調の書面を見ることがありますが、こうした書面の書き手は、読み手(相手方)の立場を想起して書面を作成していないのでしょう。少なくとも、“なぜ違法なのか”、“なぜ損害が●円”になるのかという点について、根拠・理由が明記されていないと、読み手(相手方)としては、検討のしようがないです。
7.事実と意見(評価)を分ける
まず、「事実」とは、何らかの証拠によって検証が可能な事柄のことを指します。 他方で、「意見」とは、 個人的見解や信念のことで、必ずしも証拠によって検証できない事柄を指します。
事例を見てみましょう。
(事例)
A店では、ブランドBの商品Cが5万円で売られていたので安かった。
上記事例では、「A店では、ブランドBの商品Cが5万円で売られていたので」までが「事実」の記載で、「安かった。」は「意見」の記載になります。
事実と意見(評価)が混同した文章は、読み手(相手方)に誤解を与えることがあります。
仮に、上記事例で、事実と意見(評価)を分けるとすると、以下のとおりです。
「A店では、ブランドBの商品Cが5万円で売られていたが、ブランドBの公式情報では商品Cの定価は6万円だった。A店では、商品Cが定価より1万円安く購入できるので安いと思った。」
レポートや論文を作成する際は当然として、ビジネスメールなどでも読み手(相手方)に誤解を与えないように、事実と意見(評価)が混ざった文になっていないか注意する必要があります。
とはいえ、ライターさんの記事でも事実と意見(評価)を混同したものは散見されますからね。
(書面作成のポイント)
□ 書面の作成日付を入れる
□ タイトルを付ける
□ ページ番号を入れる
□ ナンバリングや見出しを入れる
□ 定義を明確にする
□ 根拠・理由を明記する
□ 事実と意見(評価)を分ける
次回は書面作成の留意点について紹介したいと思います。
ではでは。
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