どうもスヌスムムリクです。
以前、以下の2つの記事で、書面作成の作法について紹介しました。
今回は、より具体的に、合意書・覚書等作成の作法について紹介したいと思います。
合意書・覚書等作成の作法
書面のタイトルに決まったルールはない
合意書・覚書を締結する目的は、ある事案に関して、当事者の協議内容を書面として整理しておくことにあります。つまり、言った言わないの事態を避けるためです。
もっとも、タイトルを契約書にするか、合意書、覚書にするかという点はあくまで形式の話で、決まったルールはありません。
そのため、例えば、書面のタイトルを合意書にしていれば有効で、覚書にしていたから有効でないといったことはありません。
「本件」の内容を具体的に特定する
合意書・覚書を作成する際に、最も重要な点です。
合意書・覚書では、次に述べる清算条項を設け、紛争の終局的解決を図ります。
その際に、「本件」の内容が具体的に特定されていなかった場合には、将来、●●について、以前に作成した合意書・覚書で解決していないのではないか?といった疑義が生じ、紛争が再燃する危険があります。
清算条項を設ける場合にはその範囲に注意する
清算条項には、2つのパターンがあります。
1つ目は、「甲及び乙は、甲及び乙の間には、本覚書に定めるものの他、何ら債権債務を有しないことを確認する。」
2つ目は、「甲及び乙は、本件事案に関し、甲及び乙の間には、本覚書に定めるものの他、何ら債権債務を有しないことを確認する。」
違いは、「本件事案に関し」という文言が入っているかどうかです。
例えば、問題になった「本件事案」以外にも取引関係があって、売掛代金債権があるような場合には、後者を選択します。仮に前者を選択してしまうと、売掛代金債権についてもなかったことになります。
そのため、清算条項をどちらにするのかは注意が必要です。
口外禁止条項を設けておく
口外禁止条項は必須ではないですが、念のため、盛り込んでおいた方が良いかと思います。
当事者間の合意では不十分な場合がある
例えば、XとYとの間で締結された合意書・覚書の効果は、基本的に当事者であるX・Yに及び、当事者になっていないZには及びません。
そのため、仮にZにも合意書・覚書の効果を及ぼしたい場合には、三者間間合意にする必要があります。
原契約を修正、変更する合意書・覚書を作成する上での注意
これは余談ですが、原契約を修正、変更する合意書・覚書を作成する場合には、その合意書・覚書で、原契約のどの部分をどのように修正、変更するのかを特定しなければなりません。
それでは、参考までに、以下の事案について、合意書・覚書の雛型を公開しますね(あくまで雛型なので、実際に使用する上で不明な点があれば、弁護士さんに相談してください。)。
検討事例
Xは、2019年6月1日に、クリーニング業者Yに自宅の清掃を依頼し、同日、YはXの自宅で清掃を行った。Xは、Yによる清掃が終わった後、清掃箇所を確認したところ、1階リビングのドアのノブ下に5センチ程度の傷が付いていることを発見したため、Yに連絡をして、同傷部分の補修をするように求めた。Yとしては、Xからの要求を受け、担当者に確認したところ、誤って清掃器具をドアに接触させてしまったとのことであった(他の箇所には接触させていない。)。そこで、Yは、Xに対して、ドアの補修工事費用を支払う旨を申出て、その旨を書面で整理することにした。
※ここでYがXと合意書・覚書を取り交わしておくメリットは、将来、例えば、Xから「フローリングの傷も工事で付けられた。補修費用を支払え。」などというクレームを寄せられるリスクを回避することにあります。
どのような合意書を作成するのが良いか検討してみてください。
ではでは。
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