賃貸住宅の仲介手数料は原則賃料0.54ヶ月分です

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 どうもスヌスムムリクです。

 2019年8月7日に、東京地裁で、仲介手数料の一部返還を求めた原告側の請求を認める判決が出されました。

https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20190808-00000052-mai-soci&fbclid=IwAR1Gt1fpjcmET1GBfc3n9WTUVTAGR151SBEstq8U-wJkeq3pTaVr-rv85Z4

 判決文を見ていないので詳細はまだ分かりませんが、請求及び事実関係の概要は、次のとおりです。

原告側の主張

 仲介契約の際に家賃1ヶ月分の仲介手数料を支払ったが、その際に、仲介手数料は家賃0.5ヶ月分が原則である旨の説明は受けていないし、それを超える仲介手数料を支払うことを承諾したこともない。

事実関係(概要)

1.原告は2013年1月8日頃に物件を借りたいと被告会社の担当者に連絡した。

2.10日に担当者から契約をいつ締結するかについて連絡を受けた。

3.原告は20日に契約を交わし、22日に被告会社の請求どおりに家賃1ヶ月分に当たる仲介手数料を支払った。

判決

1.被告会社が家賃1ヶ月分の仲介手数料を請求する場合は、物件の仲介をする前に承諾を得る必要がある。

2.被告会社と原告との間で仲介が成立したのは、担当者が原告に契約締結日を連絡した10日である。

3.この段階で被告会社は、原告から1ヶ月分の仲介手数料を受け取る承諾を得ていなかった。

4.したがって、被告会社は原告に対し、賃料0.5ヶ月分を超える仲介手数料の返還をしなければならない。

気になる点

1.仲介手数料は家賃0.5ヶ月分という記載について

  国土交通省の告示「宅地建物取引業者が宅地又は建物の売買等に関して受けることができる報酬の額 」では、 依頼者の一方から受け取る場合は、依頼者の承諾を得ている場合を除き、賃料1ヶ月分の0.54倍に相当する金額以内とされています。

  あくまでニュース速報を見た限りだと、仲介手数料は原則として家賃0.5ヶ月分とされていますが、これは、あくまで分かりやすさのための表現なのでしょうか。

2.原告の請求内容について

 ニュース速報では、原告の請求内容が良く分かりませんでした。

 しかし、原告としては、仲介契約の錯誤無効を主張しているわけではないと思います。

 原告の主張は、次のどちらかではないかと考えています。あくまで推測ですが…

①説明義務違反構成

 仲介契約に先立ち、仲介手数料が原則として家賃0.54ヶ月分であることを説明する義務がありながら、これを怠ったことによって、仲介手数料を家賃1ヶ月分とする仲介契約を締結してしまい損害を被った。

 但し、この構成は、ニュース速報にある「手数料の一部返還を求めた訴訟」という記載と整合しません。

②不当利得構成

 仲介契約の内容に関し、仲介手数料に関しては、家賃0.5ヶ月分とする承諾しかしておらず、これを超える承諾はしていないので、既払いの仲介手数料のうち、家賃0.5ヶ月分を超える部分は、不当利得である。

 この構成だと、ニュース速報にある「手数料の一部返還を求めた訴訟」という記載とも整合します。

3.原告の承諾がなかったという事実認定について

 裁判所は、10日に仲介契約が成立したことを前提に、その時点で、仲介手数料として家賃1ヶ月分の支払いに関する承諾を得ていなかったと認定しているようです。

 裁判所は、原告側のどのような主張を前提に、上記事実認定をしているのでしょうか。

 また、原告側が実際に仲介手数料として家賃1ヶ月分を支払っている点はどのように評価しちているのでしょうか。

 気になる点が色々あります。

4.実務に与える影響

 私は、仲介会社の実務運用のことに詳しくありませんが、仲介契約の成立前に、仲介手数料が原則として家賃0.54ヶ月分である旨の説明を受けているケースは多くなく、実際には、依頼者が仲介手数料として家賃1ヶ月分を支払ったことをもって依頼者の承諾ありとしている業者が多いのではないかと思います。

 しかし、この裁判例では、少なくとも、承諾の時期として、仲介契約の成立時を想定しているようです。

 今後、この裁判例が覆される可能性もあるのかもしれませんが、この裁判例を前提にすると、仲介会社としては、今後は仲介契約を締結する時点で、仲介手数料は家賃の1ヶ月分であることを説明しておく必要があるのでしょう。

 ではでは。

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