管理費等を改定する場合の総会決議の類型について

マンション管理
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どうも弁護士のスヌスムムリクです。

もしも私がマンション管理組合の理事長さんから質問を受けたら?シリーズです。

スヌスムムリクスヌスムムリク

今回はどういったご相談でしょうか?

理事長
理事長

この度、当マンションでは、長期修繕計画の見直しを行うとともに、修繕積立金の値上げを検討しています。

今度の定期総会で修繕積立金の値上げについて賛否を問う場合、総会の特別決議事項になるのでしょうか。

ちなみに、管理規約上、修繕積立金の金額は別表で定めるとされており、実際の金額は別表1に記載されています。

スヌスムムリク
スヌスムムリク

今回のケースですと、修繕積立金の金額について定めている別表1を変更することは、管理規約の変更に該当しますので、総会の特別決議事項となります。

実際には、こうした問題については、管理会社が対応してくれるものだと思いますが、以下、一般論的な解説をします。



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 総会決議の類型(総論)

 管理費や修繕積立金等(以下「管理費等」といいます。)の変更は、総会決議事項(区分所有法18条1項、標準管理規約(単棟型)48条3号)とされていますので、原則として、総会の普通決議事項とされます。

区分所有法18条1項本文

 共用部分の管理に関する事項は、前条の場合を除いて、集会の決議で決する。

標準管理規約(単棟型)48条3号

 次の各号に掲げる事項については、総会の決議を経なければならない。

三 管理費等及び使用料の額並びに賦課徴収方法

区分所有法 国土交通省標準管理規約(単棟型)

 しかし、管理規約の規定のされ方によっては、総会の特別決議事項と評価される場合がありますので、以下では、管理費等を改定する場合の総会決議の類型を整理してみます。

 なお、以下で述べる各類型の定義は、私が説明の便宜上付けたものです。

 総会決議の類型(各論)-普通決議or特別決議–

1 管理規約本文明記型

 管理規約本文明記型とは、管理費等の金額が、管理規約本文において、「月額●円」や「㎡当たり●円」などと具体的に明記されている類型を指します。

 この類型の場合、管理費等の金額は管理規約本文の内容になっているため、管理費等の金額を変更することは、管理規約の変更に該当し、総会の特別決議事項になります。

区分所有法31条1項

 規約の設定、変更又は廃止は、区分所有者及び議決権の各四分の三以上の多数による集会の決議によつてする。

標準管理規約(単棟型)47条3項1号

  次の各号に掲げる事項に関する総会の議事は、前項にかかわらず、組合員総数の4分の3以上及び議決権総数の4分の3以上で決する。

一 規約の制定、変更又は廃止

2 別表型

(1)別表型(原則形態)

 別表型(原則形態)とは、管理規約本文において、管理費等の金額を「別表で定める」と規定している類型を指します。

 この類型の場合、管理費等の金額が記載されている別表は、管理規約本文と一体化しているものと評価されるため、管理費等の金額が記載されている別表を変更することは、管理規約の変更に該当し、総会の特別決議事項となります。

(2)別表型(例外形態)

 別表型(例外形態)とは、管理規約本文において、管理費等の金額を「別表で定める」と規定しているが、①「規約変更」とは別に「管理費等の額の変更」を総会決議事項として挙げつつ、②「規約変更の場合を特別決議事項」としていながら、「管理費等の額の変更」を特別決議事項としていない類型を指します。

 この類型は、神戸地裁平成14年11月5日の事例になります。

 神戸地裁は、この類型の場合には、「管理費等の額の変更」を敢えて「規約変更」とは区別しており、かつ、「管理費等の額の変更」について特別決議事項にしていないことなどを理由に、管理費等の金額を変更することは、総会の普通決議事項であると判示しております。

 但し、この神戸地裁の判断はあくまでも事例判断ですし、最高裁の判断(いわゆる「判例」)ほどの意義はないと思われますので、注意が必要ではないかと考えます。

 一般論的に言えば、別表型である以上、別表も管理規約と一体化していると評価できるものとして、総会の特別決議事項としておいた方が安全だと思います。



3 別に定める型

 別に定める型とは、管理規約本文において、管理費等の金額を「別に定める」と規定している類型を指します。

 この類型の場合、管理規約本文又はこれと一体化した別表の内容を変更するものではありませんので、管理費等の金額を変更することは管理規約の変更に該当せず、原則として総会の普通決議事項になります。

 総会決議の有効性

 総会決議の「手続」又は「内容」に法令違反(区分所有法等)や管理規約違反(以下「瑕疵」といいます。)があった場合には、原則として総会決議は無効になります。

 但し、瑕疵が「手続」に関するもので、それが手続上軽微なものと評価される場合には、瑕疵の程度や特段の事情等を総合評価した上で、例外的にその総会決議が無効にならない場合があります。

 なお、総会決議の「内容」に瑕疵がある場合には、瑕疵が軽微か否かを問わず無効になります。

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