管理組合は区分所有者から自治会費を強制徴収することができるのか

マンション管理
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どうも弁護士のスヌスムムリクです。

もしも私がマンション管理組合の理事長さんから質問を受けたら?シリーズです。

スヌスムムリク
スヌスムムリク

今回はどういったご相談でしょうか?

理事長
理事長

昨今、自治会費の徴収率が低下していることを受け、自治会長を務めている理事から、自治会費を管理費等と併せて徴収できる旨の管理規約の規定を設けてはどうかという意見が出されています。

今後、規約変更を行い、自治会費を管理費等と併せて徴収できる旨の規定を盛り込めば、区分所有者から自治会費を強制的に徴収し、これを自治会に支払うことができるのでしょうか。

スヌスムムリク
スヌスムムリク

今回のケースでは、規約変更を行い、自治会費を管理費等と併せて徴収できる旨の規定を盛り込んだとしても、区分所有者から自治会費を強制的に徴収することはできません。

また、管理組合から自治会に対し、原則として、自治会費という名目で費用を支出することもできません 。

以下、一般論的な解説をいたします。



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管理組合による自治会費の徴収の可否について

管理組合は、区分所有法第3条に基づき、区分所有者全員で構成される強制加入の団体です。

区分所有法第3条

区分所有者は、全員で、建物並びにその敷地及び附属施設の管理を行うための団体を構成し、この法律の定めるところにより、集会を開き、規約を定め、及び管理者を置くことができる。一部の区分所有者のみの共用に供されるべきことが明らかな共用部分(以下「一部共用部分」という。)をそれらの区分所有者が管理するときも、同様とする。

区分所有法第30条

建物又はその敷地若しくは附属施設の管理又は使用に関する区分所有者相互間の事項は、この法律に定めるもののほか、規約で定めることができる。

他方で、自治会は、会員相互の親睦、会員福祉の増進、関係官公署各種団体との協力推進等を行うことを目的として設立された任意加入の団体です。

そのため、自治会の活動費となる自治会費の徴収方法を管理組合で決定すること自体が、管理組合の目的の範囲外といえ、管理規約で自治会費を強制徴収することができる旨を定めても拘束力はないということになります。

実際、過去の裁判例(東京簡裁平成19年8月7日)でも、次のように指摘されています。

区分所有法第3条、第30条第1項によると、原告のようなマンション管理組合は、区分所有の対象となる建物並びにその敷地及び付属施設の管理を行うために設置されるのであるから、同組合における多数決による決議は、その目的内の事項に限って、その効力を認めることができるものと解すべきである。 しかし、町内会費の徴収は、共有財産の管理に関する事項ではなく、区分所有法第3条の目的外の事項であるから、マンション管理組合において多数決で決定し たり、規約等で定めても、その拘束力はないものと解すべきである

http://www.courts.go.jp/app/files/hanrei_jp/205/035205_hanrei.pdf

管理組合から自治会への自治会費の支払いについて

原則的な考え方

管理費は、法律上、区分所有者が支払うべき費用になります。

区分所有法第19条

各共有者は、規約に別段の定めがない限りその持分に応じて、共用部分の負担に任じ、共用部分から生ずる利益を収取する。

他方で、自治会費は、本来、自治会に加入していることによって支払義務が発生するもので、管理規約に規定があるかどうかとは別問題です。

それにもかかわらず、管理規約に自治会費を管理費等と併せて徴収できる規定を設け、徴収した自治会費を自治会に支払うことになると、自治会に未加入の区分所有者は、実質的に自治会に強制加入させられたのと同じことになってしまいます。

そのため、原則的には、管理組合から自治会に自治会費を支払うことはできないということになります。

管理費等と自治会費の徴収に関する取扱いについては、国土交通省の標準管理規約(19頁)でも指摘されています。

自治会費又は町内会費等を管理費等と一体で徴収している場合には、以下の点に留意すべきである。

ア 自治会又は町内会等への加入を強制するものとならないようにすること。

イ 自治会又は町内会等への加入を希望しない者から自治会費又は町内会費等の徴収を行わないこと。

ウ 自治会費又は町内会費等を管理費とは区分経理すること。

エ 管理組合による自治会費又は町内会費等の代行徴収に係る負担について整理すること。

上述のような管理組合の法的性質からすれば、マンションの管理に関わりのない活動を行うことは適切ではない。例えば、一部の者のみに対象が限定されるクラブやサークル活動経費、主として親睦を目的とする飲食の経費などは、マンションの管理業務の範囲を超え、マンション全体の資産価値向上等に資するとも言い難いため、区分所有者全員から強制徴収する 管理費をそれらの費用に充てることは適切ではなく、管理費とは別に、参加者からの直接の支払や積立て等によって費用を賄うべきである。

https://www.mlit.go.jp/common/001202416.pdf



例外的な考え方

もっとも、標準管理規約(18頁)では、次のような指摘もなされています。

例えば、マンションやその周辺における美化や清掃、景観形成、防災・防犯活 動、生活ルールの調整等で、その経費に見合ったマンションの資産価値の向上がもたらされる活動は、それが区分所有法第3条に定める管理組合の目的である「建物並びにその敷地及び附属施設の管理」の範囲内で行われる限りにおいて可能である。

標準管理規約第32条10号

マンション及び周辺の風紀、秩序及び安全の維持、防災並びに居住環境の維持及び向上に関する業務

https://www.mlit.go.jp/common/001202416.pdf

そうすると、自治会の活動内容が上記管理組合の業務と一致しているような場合には、管理組合が自治会に当該業務を委託し、委託した業務に見合う業務委託費を支払うこと(実質的にみると、管理組合が自治会費の徴収代行をしているような関係)は、区分所有法に反しないものと評価される余地があります。

最後に(疑問点)

標準管理規約のコメントでは、「自治会費又は町内会費等を管理費等と一体で徴収している場合」を想定した指摘がありました。

しかし、前述の裁判例を前提にした場合、そもそも、自治会費の徴収にかかる規約自体に拘束力がないということになりますので、上記場合が想定できないように思えます。

最高裁の判断が示されている論点ではないので、区分所有法と標準管理規約(同コメント)をどのように整合的に理解するのかが今後の課題になります。

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