マンションの給排水管の補修費用は誰が負担するのか?

マンション管理
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どうも弁護士のスヌスムムリクです。

もしも私がマンション管理組合の理事長さんから質問を受けたら?シリーズです。

スヌスムムリク
スヌスムムリク

今回はどのようなご相談でしょうか?

理事長
理事長

当マンションの給排水管から漏水が発生しました。漏水箇所を調査したところ、専有部である特定住戸の床下であることが判明したのですが、その場合、漏水箇所の補修工事の実施及び費用負担は管理組合なのでしょうか。なお、当マンションの管理規約は、国土交通省の標準管理規約(単棟型)に準じた内容になっています。

スヌスムムリク
スヌスムムリク

管理規約の内容が標準管理規約に準じたものである場合、原則として、いわゆる縦管(主管)は共用部、横管(枝管)は専有部と整理されます。

そのため、今回のケースでは、補修工事の実施及び費用負担は、特定住戸の区分所有者ということになるのではないかと推察されます。

但し、最終的な判断は、マンションの構造や給排水管の設置場所等を図面で確認した上で行う必要があります。

以下、標準管理規約(単棟型)を前提に、一般論的な解説をいたします。

 なお、マンションの専有部分と共用部分の区別方法については、こちらの記事をご参照ください。



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給排水管の帰属について

管理規約に定めがある場合

国土交通省の標準管理規約(単棟型)では、給排水管が共用部か専有部かについて、次のような規定を置いています。

第8条 対象物件のうち共用部分の範囲は、別表第2に掲げるとおりとする。

別表第2 共用部分の範囲

1 エントランスホール、廊下、階段、エレベーターホール、エレベーター室、共用トイレ、屋上、屋根、塔屋、ポンプ室、自家用電気室、機械室、受水槽室、高置水槽室、パイプスペース、メーターボックス(給湯器ボイラー等の設備を除く。)、内外壁、界壁、床スラブ、床、天井、柱、基礎部分、バルコニー等専有部分に属さない「建物の部分」

2 エレベーター設備、電気設備、給水設備、排水設備、消防・防災設備、インターネット通信設備、テレビ共同受信設備、オートロック設備、宅配ボックス、避雷設備、集合郵便受箱、各種の配線配管(給水管については、本管から各住戸メーターを含む部分、雑排水管及び汚水管については、配管継手及び立て管)等専有部分に属さない「建物の附属物」

3 管理事務室、管理用倉庫、清掃員控室、集会室、トランクルーム、倉庫及びそれらの附属物

https://www.mlit.go.jp/common/001202416.pdf

つまり、標準管理規約によれば、配線配管について、縦管(主管)は共用部分、横管(枝管)は専有部分という建付けにしているようです。

より分かりやすく、参考までに前回の記事でも紹介した資料(マンション管理標準指針コメント2(国土交通省 平成17年12月策定)より抜粋 )を示します。

そのため、マンションの管理規約が標準管理規約(単棟型)に準じた内容であれば、 給排水管の帰属は、縦管(主管)は共用部分、横管(枝管)は専有部分という整理になります。

管理規約に定めがない場合

他方で、管理規約に前述したような定めがない場合でも、原則として、 給排水管の帰属は、縦管(主管)は共用部分、横管(枝管)は専有部分という整理になります。

但し、過去には、マンションの特定の専有部分からの汚水が流れるコンクリートスラブ下の排水管の枝管の帰属(共用部か専有部か)が争われた事案において、最高裁平成12年3月21日判決は、共用部分に当たると判示しています。

右事実関係の下においては、本件排水管は、その構造及び設置場所に照らし、建物の区分所有等に関する法律二条四項にいう専有部分に属しない建物の附属物に当たり、かつ、区分所有者全員の共用部分に当たると解するのが相当である。

http://www.courts.go.jp/app/files/hanrei_jp/818/062818_hanrei.pdf

ここで最高裁が指摘している「事実関係」は、次のようなものです。

①マンションの専有部分である甲室の床下コンクリートスラブと階下にある乙室の天井板との間の空間に配された排水管の枝管を通じて甲室の汚水が本管に流される構造となっていること

②甲室から右枝管の点検、修理を行うことは不可能であること

③乙室からその天井裏に入ってこれを実施するほか方法はないこと

このように、最高裁は、構造や設置場所によっては、横管(枝管)であっても、例外として、共用部分と評価される場合があることを示唆していますので、杓子定規に給排水管の帰属について判断するのは禁物です。

給排水管の補修工事の費用負担者について

給排水管の帰属について、共用部分ということであれば、管理組合が補修工事の費用を負担し、専有部分ということであれば、特定住戸の区分所有者が補修工事の費用を負担することになるのが原則です。

但し、ある区分所有者の行為によって、共用部分とされる給排水管に漏水が生じたような場合には、区分所有者が補修工事に費用を負担することもあり得ます。

そのため、ケースバイケースの判断が必要になります。

おわりに

法的には、給排水管の帰属の問題、補修工事の費用負担者の問題は、前述のとおり整理できます。

しかし、管理会社で勤務している友人に聞いたところ、例えば、漏水箇所の特定調査などの費用は、調査結果が共用部か専有部かを問わず、管理組合の保険で填補されるケースが多いようで、実務的には、必ずしも前述のような整理を厳密にしているわけではないのかもしれません。

ではでは。

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