管理組合・区分所有者間の合意は特定承継人に対して効力があるか

マンション管理
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どうも弁護士のスヌスムムリクです。

もしも私がマンション管理組合の理事長さんから質問を受けたら?シリーズです。

スヌスムムリク
スヌスムムリク

今回はどのようなご相談でしょうか?

理事長
理事長

当管理組合は、店舗区分所有者Aと店舗部分の用途をスーパーに限定する合意書を取り交わしておりました。しかし、先日、Aから店舗部分を取得したBが、そこで飲食店を開業しようとしています。当理事会としては、Aとの間の合意書を根拠に、Bに対して飲食店の開業を中止するように求めたいと考えていますが、問題ないでしょうか。

スヌスムムリク
スヌスムムリク

原則、合意書を根拠にBに対して飲食店の開業を中止するように求めることはできません。以下、標準管理規約(単棟型)を前提に、一般論的な解説をいたします(例外も併せて説明します。)。



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前提

 管理組合とAとの間の合意(便宜上、「用途制限契約」といいます。)は、当事者間でのみ効力があるのが原則で、当然に第三者たるBにまで効力が及ぶわけではありません。

 第三者たるBに用途制限契約の効力が及ぶのは、①法律上の根拠がある場合、②用途制限契約自体に承継文言がある場合、③BがAの地位を包括承継した場合(例:相続)です。

 以下では、①・②について一般論的な解説をしていきます。

法律上の根拠がある場合

区分所有法の建付けについて

 区分所有法では、以下のとおり、「規約」及び「集会の決議」については、特定承継人に対しても効力を生ずるものと定められています。

 そのため、管理組合がAと用途制限契約を取り交わした後にその内容を規約で定めたり、総会決議で用途制限について決議していたような場合については、その内容がBにも及びます。

区分所有法30条1項

建物又はその敷地若しくは附属施設の管理又は使用に関する区分所有者相互間の事項は、この法律に定めるもののほか、規約で定めることができる。

区分所有法46条1項

規約及び集会の決議は、区分所有者の特定承継人に対しても、その効力を生ずる。

https://elaws.e-gov.go.jp/search/elawsSearch/elaws_search/lsg0500/viewContents?lawId=337AC0000000069_20150801_000000000000000

参考判例について

本件のような事例について、 最判平成9年3月27日は、以下のとおり判示しています。

まぁ、当然の判断だと思います。

旧規約制定当時、昭和五八年法律第五一号による改正前の建物区分所有法が施行されていたが、同法は、建物の使用に関する区分所有者相互間の事項については、 これを規約で定めることができるものとし(二三条)、かつ、規約は区分所有者の特定承継人に対してもその効力を生ずる旨を定めていた(二五条)。その趣旨は、区分所有建物の特殊性にかんがみ、区分所有権を取得しようとする者は、規約を点検することによって、自己が権利を得ようとする物件につい て存在する各種の制限を知り得ることを前提としたものである。したがって、 特定承継人をも拘束し得る制限条項を設けるためには、すべて画一的に規約 (現行法の下においては、規約又は集会決議)によってこれを明記しておく ことが求められるのであって、元所有者又は前所有者がした債権契約に基づ く権利制限の合意を安易に規約上定められた制限条項と同視することは許されない。

また、原判決は、住居としてのみ使用し得ることを定めた新規約一二条が一〇一号室にも適用されるとするが、「住戸部分を取得した区分所有者」につき規定した同条が同室に適用されるものか否かは規定上必ずしも明確でなく、仮にその適用があるとしても、同条の規定は、「一部の区分所有者 の権利に特別の影響を及ぼすべきとき」に当たるから、当時の同室の所有者であるGの承諾を得なければならないところ(建物区分所有法三一条一項後 段)、同社は、規約の改正に当たり白紙委任状を提出しているとはいうものの、 これによって同社の個別的承諾を得たものとは認められず、いずれにせよ、 同室の区分所有権を前所有者であるHから売買により取得したにすぎない上告人は、原判決の説示する諸事情を考慮しても、右制限に拘束されることはないものというべきである。

http://www.courts.go.jp/app/hanrei_jp/detail2?id=63032

用途制限契約自体に承継文言がある場合

仮に、用途制限に関する規約や総会決議がなかったとしても、用途制限契約自体に承継文言があれば、管理組合は、Bに対して、これを根拠に飲食店の開業を中止するように求めることができます。

具体的には、管理組合とAとの間の用途制限契約の中に、「Aが店舗部分を売却する場合には、買主に本用途制限契約におけるAの地位を承継させるものとする。」というような条項を設けているような場合です。

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